南三陸町のみんなに写真集を届けようプロジェクト

特定非営利活動法人(認定NPO法人)
ピースウィンズ・ジャパン 東北事業事業調整員
西城幸江
宮城県南三陸町出身。2010〜2011年、パラグアイにて村落開発普及員として活動中に東日本大震災により帰国。出身地の南三陸町の復興に関わるためにNPO法人ピースウィンズ・ジャパンに就職。南三陸町での漁業復興支援業務を担当。
南三陸町震災前写真集_西城
震災前の気持ちを思い出してほしい
震災から一年近く経ちますが、だんだん私たち自身が昔の南三陸の風景を忘れ始めているんです。記憶が薄れていくというか。家の基礎も無くなったら、自分の家がどこにあったのかさえ分からなくなるかもしれない。でも風景だけじゃなくて、そこにあった町の人たちの営みや、子どもの頃に楽しかったことまで忘れたくないし、忘れてほしくない。それが写真集をつくろうと思った私の思いです。昔の写真を見て懐かしむだけじゃなくて、“前はこんなこともしてたね”ってその頃の気持ちを、町の人たちに思い出してほしいなって。
南三陸町震災前写真集_震災後
またここでやっていこう、と力が湧くものを
きっかけは,町の写真屋さんからのご提案でした。佐々木さんは代々続く町の写真屋で、震災前から町の写真を撮り続けていました。それを写真集にして町の人たちに配りたいとお話をいただいて。佐々木さんが最近地元で写真を撮っていると、あの時の写真は残ってないかとか、この場所の写真はないのと聞かれるそうなんです。そこで、私が企画役として関わって、佐々木さん以外の方の写真も合わせて写真集をつくり、南三陸町の4890世帯に加えて、この3年間で高校を卒業する1500人と、学校等の公共施設に配る分1000冊の合計7390冊の印刷代について、全国のみなさんに協賛していただく形を考えました。
この写真集には、震災後の写真は一切入れずに、震災前の写真だけを入れたいと思っています。何でもない町の風景やお祭りの写真など。震災後の光景はもう毎日見ているし、すでにたくさん世に出ているから。私たちは、町が被災地として見られ、報道されることに、少し疲れているのかもしれません。もちろん、報道されるからこそボランティアの方も来てくれて、支援をいただいているのも事実です。でも見たくないものを繰り返し見て、無意識に自分たちを可哀相と思うようになっていったり、元気を取られていくような感覚もあります。だから私は、町の人たちがまたここで頑張っていこうと思えるような、力の湧くものをつくりたい。
南三陸町震災前写真集_震災前の町
自分たちの足で歩き始めるために
私は中学生まではこの町で育ちましたが、震災が起きた時には青年海外協力隊でパラグアイに派遣されていました。震災直後に飛んで帰ってきて、これからどのようにこの町と関わっていくか正直悩みました。パラグアイで農村開発に携わっていた時に、外部の人間がどんなに協力しても、そこの住人が動き始めないことには物事は進まないと実感していました。今回の震災も同じじゃないかと、ふとパラグアイで感じていたことが頭をよぎりました。外からの支援には終わりがあるし、いつかは自分たちの力で歩き始めないといけない。その時に、町が早く一人で歩いていけるようになったらいいなと思いました。だから、ピースウィンズ・ジャパンというNGOに入って町の人たちを手伝おうと決めました。それも一方的な支援じゃなく、ここの人たちがやろうとすることをサポートする形で。私は、この土地で育ったからこそ、町の人たちと共有できる原風景があります。例えば、子どもの頃から秋になると川に鮭が戻ってくる様子を毎年見ていたからこそ、鮭の孵化事業を進めることや、それを観光に結びつけることを提案できた。商店街をつくる時には、これまでそれぞれの店が共同で何かをやることに慣れていないのを知っているから、まずは集まって支援金の使い道について協議する場をつくりました。そうやって一つずつ町の人たちの気持ちに火をつけることができたらと思っているんです。この写真のプロジェクトも同じです。支援を受けることに慣れてしまうのは怖いこと。だから、昔の町の写真を見て、以前は自分たちの足で歩いていたことを思い出して、もう一度みんなで歩き始めたい。
写真はその人が生きてきた証
私自身、家族が撮ってくれていた子どもの頃の写真は全部流されてしまいました。過去の写真がないって本当につらいことです。それは、すべての思い出が失われてしまうみたいです。みんな、物よりもまず写真を探しに行ったって言います。この写真集は南三陸のみんなへの、そんな思い出のプレゼントでもあります。自分が映ってなくてもいいんです。写真一枚を通じて思い出せることがあったら。
南三陸町震災前写真集_震災前のお祭り風景
もちろん、まだ昔の風景を見るのもつらいという人も沢山います。その人たちには、閉じたまま手元に置いてもらえたらいい。写真はその人が生きてきた証のようなもの。振り返りたい時に振り返ることができれば、また先へ進めると思うから。
そして、もう一つ。震災前の南三陸を知らない人たちにもぜひ見てほしい。私も被害を受けた他の地域のことはよく知らなくて。お正月に陸前高田に行く機会があったのですが、震災前を知らないからどう変わったのかよくわからなかった。だから初めて南三陸町に来る人たちも同じだと気付いたんです。報道で悲惨な状況だけを見ているから、来ただけで感極まって涙ぐむボランティアの方もいます。その人たちに、南三陸町も元はフツーの穏やかな漁師町だったということを伝えたい。「被災した町」としてだけじゃない南三陸町を知ってもらって、一緒に新しい南三陸町をつくっていきたい。
これから町はどんどん震災から復興していかなきゃいけない。この写真集が一人でも多くの南三陸町を知らない人の手に渡って、この町が元気だった時の姿を知っていただけたらうれしいし、自分たちもまた次の一歩を踏み出していける、そう思っています。
南三陸町の写真屋さんや印刷屋さんにある震災前の写真だけを集めて写真集を作成し,2012年3月29日以降、順次、南三陸町のみんなに7390冊とご協賛頂いたみなさまに写真集をお届け致します。
みなさまからお預かりした協賛金は、写真集の印刷代および、みなさまへの発送代とし大切に活用させて頂きます。
プロジェクト概要図
プロジェクト概要と協賛のお願い
有限会社ササキ写真店/佐々木朋浩さん
彩プロジェクト事務局/宮川舞さん
マルタケ大衆ストアー/高橋多惠さん
マルアラ株式会社 及川商店 代表取締役社長/及川吉則さん
宮城県漁業協同組合/高橋敏洋さん